コンポストトイレ(バイオトイレ)の最近のブログ記事
[シリーズ:女性の視点からのトイレ]
48 尿分別式コンポストトイレ〈節水と、トイレ・生ごみの資源循環〉
日本工業出版社「建築設備と配管工事」2011/9月号巻末に、上記タイトルのレポートが掲載されました。「GreenLyコンポストトイレ」開発の経緯などを書いております。ぜひご一読ください。
女性は、トイレのたびにトイレットペーパーを使う。 トイレットペーパーを流さなければ、排水は 1 回 500ml 以下で十分、かなりの節水ができる。ところ で、1 日のトイレは 7~10 回、小で 1 回 40cm を目 安に、トイレットペーパーはシングル巻きで4mが必 要。使ったトイレットペーパーを屑籠に溜めてみると その嵩に驚く。皆さんは 1 回の使用量はどれくらい。 日本の人口 1 億 2000 万人の半分以上の女性がこれ を実行すれば、ものすごい嵩のトイレットペーパーを 流さず、遠くの下水処理場に流れ着いて汚泥となるこ ともなく、膨大な汚泥処理費用が削減できるのではと 思う。トイレットペーパーの使い方は、特に、女の子 の幼児期の教育に期待したい。知人に機会ある毎に話 をするが、大抵は「何で?」と、呆れ顔をされる。
2、初めてのコンポストトイレ体験
1999 年岡山県の田舎暮らしで、電気ヒーター装備のカナダ製小型コンポストトイレ 1 人用を使い始めた。 尿と大便は分別せずドラムの処理槽に入り、定期的な チップの追加と攪拌を行う。サーモヒーターと換気フ ァンを使って水分(尿)をコンポストトイレの外に蒸 発させる。微生物とエサ(排泄物)、周辺温度と水分 率のバランスが適切なら臭気は発生しない。ヒーター 温度 40°C~60°C/消費電気最大 150W。堆肥は、1 ~3 ヶ月毎におよそ10Lを受け皿(引き出し)に取 り出す。受け皿にそのまま 1 ヶ月保管して、堆肥とし て利用する。1 年後には、同社の電気なしモデル(ソ ーラーパネル用の 12V 換気ファン装備)も併用した。
3、コンポストトイレ欧米の事情
コンポストトイレの歴史は、100 年以上前に多くの「earth closet」が生産され、イギリスのビクトリア 女王も使ったと伝えられる。1930 年代にスエーデン で Clivus Multrum、1960 年代には Twin-chamber system がアジア・中央アメリカ・メキシコに導入さ れた。1970 年代には、北欧や北アメリカでは多くの コンポストトイレが生産されるようになった。
北アメリカでは 1960 代年~70年代に、産業の発 展に伴って大気汚染・河川の汚れなど環境悪化が深刻 になる一方、下水道の整備は進むものの莫大な費用が 問題となっていた。その下水の汚染源の 80%以上が 「尿」に起因するといわれ、汚水の発生源での処理の 必要と共に、コンポストトイレにも注目が集まった。
4、多種多様なコンポストトイレ 世界のコンポストトイレには、小型の家庭用から公 共施設などに設置される大掛かりな設備まで多くの種 類があり、それぞれに創意工夫がある。
David Del Porto 氏は、その著書「The Composting Toilet System Book」に以下のように 分類している。
(1)「self-contained(便器と処理槽が一体)」と「Centralized(便器はトイレ室・処理槽は床下)」
(2)「Batch(複数の貯蔵容器)」と「Continuous(単独の処理槽)」
(3)「Active(ヒーター・攪拌操作を行う」と「Passive(機械的な操作をしない)」
(4)生産品 と 個人製作
氏は「Batch」を支持するも、デメリットについて は、容器に排泄物を溜めて、いつ満タンになるのかを監視し、一杯になると、新しい容器と取替える作業に 骨が折れると報告する。氏は、「Batch」式に分類さ れる「Carousel」が、スカンジナビアでもっとも多く 設置されていると書き、「Carousel」は床下に、4 層 に区切られたスペースに順番に排泄物を溜めていくの だが、一杯になったスペースと空のスペースとのバラ ンスが悪くなり、スペースの移動・回転が困難である と報告している。多種多様なコンポストトイレには一 長一短がある。
そして、私が更なる改良を目指して、新しいコンポ ストトイレに挑戦したのは 2004 年であった。
5、コンポストトイレ開発の課題
コンポストトイレを必要とする人は、
(1)公共下水がない
(2)合併浄化槽費用が高く付く
(3)排泄物を安全な資源として利用したい
(4)野外活動の拠点で利用したい、また防災用として利用したい
などの事情がある。
下水がないところとは、都会から遠く離れた田舎、 山間、離島、山岳地帯等など、多くは寒冷地でもあり、 コンポストトイレ設置条件が揃わないところもある。
コンポストトイレを、臭気を出さす上手に使うには、 排泄物を分解してくれる好気性微生物の活動を活発に する環境因子(周辺温度・水分率・酸素供給)を整え、 最低限の維持管理を怠らないことが大切である。 その好気性微生物の適温は、周辺温度が 15°C以上で、 温度が高ければ高いほど排泄物の分解速度が早くな る。皮肉なことに、コンポストトイレの必要なところ では、その温度条件がより厳しい。好気性菌は、
(1)好冷性(6°C~20°C)
(2)中温性(21°C~45°C)
(3)高熱性 46°C~71°C、さらに超高熱性
と区分されているが、残念なことに通常 15°C以下で は多くが休眠又は死滅するとされている。
コンポストの保温や攪拌動力に風力・ソーラーパネ ルによる自然エネルギーを試みるものもあるが、設置 費用が高く天候に左右されやすい。
6、安全な堆肥の利用(大腸菌の処理)
コンポストトイレを使って、排泄物を安全な資源と して利用するには、大便の糞便性大腸菌駆除が必要で ある。そのためには、未熟成なままでは直接手で触れ ないこと(ゴム手袋の着用)、すぐ収穫する生野菜には施肥しないことが必要である。家庭で使うコンポス トトイレから取出した堆肥を、自分の田畑や花壇で利 用するとき、そこに重大な危険があるとは思えないが、 取扱には注意が必要である。
H15 年 7 月当時、岡山県で使っていたコンポスト トイレから取出した堆肥で、大腸菌駆除を試みた。
(1)取出したコンポスト(堆肥)を土嚢袋に 1 ヶ月以上保管した。(駆除期間は、周辺温度・堆肥の水 分率に左右されるが、保管期間は長ければ長いほ ど安全性が高くなる)
(2)取出したコンポストをビニール袋に入れ、炎天下 に約 15 分間放置し 55°Cを確認、さらにビニール 袋のコンポストを上下・裏表に返し、内部の温度 が 50°C~55°Cに達するのを確認した。
更に、堆肥の安全性に疑問がある場合は、石灰や草 木灰を混ぜて、殺菌する方法がある。岡山での実験結 果は、いずれも糞便性の大腸菌は検出されなかった。 (検査機関:共同組合岡山県環境整備協会 建築物飲料 水水質検査登録機関)
7、「トイレは分別式に」
コンポストトイレで排泄物を資源化するとき、尿と大便を分けて利用する方法がある。「分ける」か「分 けない」によって、よく知られるコンポストトイレ(バ イオトイレ)を例に、表 1 にまとめた。
家庭用コンポストトイレで尿と大便を分けると、その利点は、
(1)は植物の肥料としてすぐ活用できる。
(2)大便などの構成物(コンポスト)の水分率が保 たれ管理が簡単、コンポストに尿の塩分が蓄積しない。
尿は腎臓で生産される弱酸性・通常無菌、成人 1 日 平均 1.5L、90%以上が水分で植物の肥料となる養分 (窒素・りん・カリ)を含む。個人差はあるものの、 窒素は、年間3kg~5kg も活用できる。Ecological = Economical を目指すトイレは「尿分別式」コンポス トトイレであろうと思う。「分ける」必要があると考 えた。
8、 GreenLyの誕生
2004 年、開発に着手したコンポストトイレは、 2010 年に製品化した。商標は「GreenLy」とした。
8-1 「GreenLy の特長」
(1)1 尿は植物の肥料として、すぐに活用できる。 →オシッコ→肥料→作物→食物→
(2)ヒーターはつかわず省エネをめざす。電気のないところでの稼動を可能とする。
(3)攪拌は手動。大便などの構成物(コンポスト) 30L~50Lを手動攪拌するために特殊な形態 の攪拌体が必要であった。先行技術とにらめっこ で開発を進めた。 (4)周辺温度 15°C以下(5°C以上)で、大便等の分解 が進む GreenLy 独自の微生物母材を使用する。
(5)好気性微生物活動に適切な環境を整え、臭気を発生させない。
(6)最後に、大便を微生物分解して安全に活用する。
8-2 5月4日の実験
8人(大半が 30 代の男性)が、一番小さい GreenLy で 18 時間、使用実験をした。最近男性の着座でのト イレにあまり違和感がないとのこと、また尿分別式も 問題なし。年配の男性のためには小便器があったほう がよいかもしれない。
9、生ごみも発生源でリサイクル
年間、1 人分約 150kg の生ごみを、ごみ収集車が集 めて、焼却する。この労力と処理費用削減のために、 1 人でも多く、生ごみを各家庭で処理し、庭やベラン ダで土に還しリサイクルできるとよいのだが。電気を 使わない生ごみ処理器「くうたくん」は、写真のよう なプラスチックバケツで、微生物と酵素の母材が、残 飯・茶がら・コーヒー糟・尐量の廃油・なべやフライ パンの汚れなど毎日 300gを、水蒸気と炭酸ガスなど に分解する。 嵩はほとんど増えず、母材は数年間継 続して使える。畑のコンポスターは、「くうたくん」 に入らないより大きな野菜くずなどを投入し、ドラム をグルグル回す。6ヶ月~1年に1回、取出して畑の 肥料になる。このドラムコンポスターでは、畑に出没 する害獣(いたち・ハクビシン・アライグマ・いのし しなど)が生ごみを食べ散らかさないのがよい。
10、終わりに
排泄物を発生源で資源化する試みが、ますます広がる ことに期待し、水なし・電気なしで稼動できる GreenLy のようなコンポストトイレが、地震災害など 非常時のトイレとしても常設され、常から使われて、 万一の被災にも役に立つことを願っている。そのため には、一層の機能向上、改善・改良の積み重ねが必要 であろうと思う。
48 尿分別式コンポストトイレ〈節水と、トイレ・生ごみの資源循環〉
日本工業出版社「建築設備と配管工事」2011/9月号巻末に、上記タイトルのレポートが掲載されました。「GreenLyコンポストトイレ」開発の経緯などを書いております。ぜひご一読ください。
1、 はじめに
1-1 水の話(1)竜田川のモミジ
阪神大震災の前年まで、私が住んでいた奈良県生駒 郡でのこと。高台の新興住宅から流れ出た排水が、古 今集に詠まれた竜田川のもみじを枯らしてしまった。 お風呂などの温かい排水が、毎日、マンホールの隙間 から湯気を上げて流れ下り集中浄化槽へ、そしてまも なく川へと排水された。枯れはじめたモミジは、川岸 の道を走り回る自動車の邪魔と、容赦なく切り倒され た。
1-2 水の話(2)カナダの食器洗い
20 年以上前、2ヶ月余りカナダを旅したときの出来事。バンクバーからロッキー山脈を越えエドモント ンに着いたのは 4 月はじめ、翌日-20°Cの中、ホーム ステイ先を外出し、道に迷い、ホストファミリーに迷 惑を掛けたことを思い出す。ところでそのご夫婦の故 郷は、数ヶ月間、川も湖も凍ってしまう厳冬の地マニ トバ(カナダの内陸部)、それ故か水を大切にした暮 らしぶりに驚かされた。油で汚れた鍋やお皿洗いは、 ボウルに溜めた水に数滴の洗剤を落とし、スポンジで ごしごし、あとは布巾でふき取るだけ。当時カナダの 多くの家庭では溜め水で食器を洗うのは常識で、リン スをすることもあった。「Alas! すすがないの」、「故 郷の 90 歳になるおばあさんもこのやり方でずっと健 康よ、『 In Rome, do as the Romans do.』」と。 私たちも見習う時がきていると思う。
1-3 トイレットペーパーと節水
エドモントンのお宅は、2 人暮らしでトイレが 3 箇所。 便器の横には蓋なしの大きい籠が置かれ、「ト イレットペーパーは下水に流さないでね」と指示され た。「なるほど」と感心したが、実際これを実行する のはずいぶん後になってからのこと。
この 4 月に 87 歳で他界した義母は、昔から何十年も、水洗トイレはいつも節水、トイレットペーパーは 流さなかった。台所では洗剤はほとんど使わず、流し の近くにバケツを置いて、お米のとぎ汁・お茶碗の洗 い水を溜めて、こまめに庭の野菜や花に水遣りを怠ら なかった。季節ごとに数種の野菜を育てていたが、肥 料を買った話は一度も聞いたことがなかった。
1-1 水の話(1)竜田川のモミジ
阪神大震災の前年まで、私が住んでいた奈良県生駒 郡でのこと。高台の新興住宅から流れ出た排水が、古 今集に詠まれた竜田川のもみじを枯らしてしまった。 お風呂などの温かい排水が、毎日、マンホールの隙間 から湯気を上げて流れ下り集中浄化槽へ、そしてまも なく川へと排水された。枯れはじめたモミジは、川岸 の道を走り回る自動車の邪魔と、容赦なく切り倒され た。
1-2 水の話(2)カナダの食器洗い
20 年以上前、2ヶ月余りカナダを旅したときの出来事。バンクバーからロッキー山脈を越えエドモント ンに着いたのは 4 月はじめ、翌日-20°Cの中、ホーム ステイ先を外出し、道に迷い、ホストファミリーに迷 惑を掛けたことを思い出す。ところでそのご夫婦の故 郷は、数ヶ月間、川も湖も凍ってしまう厳冬の地マニ トバ(カナダの内陸部)、それ故か水を大切にした暮 らしぶりに驚かされた。油で汚れた鍋やお皿洗いは、 ボウルに溜めた水に数滴の洗剤を落とし、スポンジで ごしごし、あとは布巾でふき取るだけ。当時カナダの 多くの家庭では溜め水で食器を洗うのは常識で、リン スをすることもあった。「Alas! すすがないの」、「故 郷の 90 歳になるおばあさんもこのやり方でずっと健 康よ、『 In Rome, do as the Romans do.』」と。 私たちも見習う時がきていると思う。
1-3 トイレットペーパーと節水
エドモントンのお宅は、2 人暮らしでトイレが 3 箇所。 便器の横には蓋なしの大きい籠が置かれ、「ト イレットペーパーは下水に流さないでね」と指示され た。「なるほど」と感心したが、実際これを実行する のはずいぶん後になってからのこと。
この 4 月に 87 歳で他界した義母は、昔から何十年も、水洗トイレはいつも節水、トイレットペーパーは 流さなかった。台所では洗剤はほとんど使わず、流し の近くにバケツを置いて、お米のとぎ汁・お茶碗の洗 い水を溜めて、こまめに庭の野菜や花に水遣りを怠ら なかった。季節ごとに数種の野菜を育てていたが、肥 料を買った話は一度も聞いたことがなかった。
女性は、トイレのたびにトイレットペーパーを使う。 トイレットペーパーを流さなければ、排水は 1 回 500ml 以下で十分、かなりの節水ができる。ところ で、1 日のトイレは 7~10 回、小で 1 回 40cm を目 安に、トイレットペーパーはシングル巻きで4mが必 要。使ったトイレットペーパーを屑籠に溜めてみると その嵩に驚く。皆さんは 1 回の使用量はどれくらい。 日本の人口 1 億 2000 万人の半分以上の女性がこれ を実行すれば、ものすごい嵩のトイレットペーパーを 流さず、遠くの下水処理場に流れ着いて汚泥となるこ ともなく、膨大な汚泥処理費用が削減できるのではと 思う。トイレットペーパーの使い方は、特に、女の子 の幼児期の教育に期待したい。知人に機会ある毎に話 をするが、大抵は「何で?」と、呆れ顔をされる。
2、初めてのコンポストトイレ体験
1999 年岡山県の田舎暮らしで、電気ヒーター装備のカナダ製小型コンポストトイレ 1 人用を使い始めた。 尿と大便は分別せずドラムの処理槽に入り、定期的な チップの追加と攪拌を行う。サーモヒーターと換気フ ァンを使って水分(尿)をコンポストトイレの外に蒸 発させる。微生物とエサ(排泄物)、周辺温度と水分 率のバランスが適切なら臭気は発生しない。ヒーター 温度 40°C~60°C/消費電気最大 150W。堆肥は、1 ~3 ヶ月毎におよそ10Lを受け皿(引き出し)に取 り出す。受け皿にそのまま 1 ヶ月保管して、堆肥とし て利用する。1 年後には、同社の電気なしモデル(ソ ーラーパネル用の 12V 換気ファン装備)も併用した。
3、コンポストトイレ欧米の事情
コンポストトイレの歴史は、100 年以上前に多くの「earth closet」が生産され、イギリスのビクトリア 女王も使ったと伝えられる。1930 年代にスエーデン で Clivus Multrum、1960 年代には Twin-chamber system がアジア・中央アメリカ・メキシコに導入さ れた。1970 年代には、北欧や北アメリカでは多くの コンポストトイレが生産されるようになった。
北アメリカでは 1960 代年~70年代に、産業の発 展に伴って大気汚染・河川の汚れなど環境悪化が深刻 になる一方、下水道の整備は進むものの莫大な費用が 問題となっていた。その下水の汚染源の 80%以上が 「尿」に起因するといわれ、汚水の発生源での処理の 必要と共に、コンポストトイレにも注目が集まった。
4、多種多様なコンポストトイレ 世界のコンポストトイレには、小型の家庭用から公 共施設などに設置される大掛かりな設備まで多くの種 類があり、それぞれに創意工夫がある。
David Del Porto 氏は、その著書「The Composting Toilet System Book」に以下のように 分類している。
(1)「self-contained(便器と処理槽が一体)」と「Centralized(便器はトイレ室・処理槽は床下)」
(2)「Batch(複数の貯蔵容器)」と「Continuous(単独の処理槽)」
(3)「Active(ヒーター・攪拌操作を行う」と「Passive(機械的な操作をしない)」
(4)生産品 と 個人製作
氏は「Batch」を支持するも、デメリットについて は、容器に排泄物を溜めて、いつ満タンになるのかを監視し、一杯になると、新しい容器と取替える作業に 骨が折れると報告する。氏は、「Batch」式に分類さ れる「Carousel」が、スカンジナビアでもっとも多く 設置されていると書き、「Carousel」は床下に、4 層 に区切られたスペースに順番に排泄物を溜めていくの だが、一杯になったスペースと空のスペースとのバラ ンスが悪くなり、スペースの移動・回転が困難である と報告している。多種多様なコンポストトイレには一 長一短がある。
そして、私が更なる改良を目指して、新しいコンポ ストトイレに挑戦したのは 2004 年であった。
5、コンポストトイレ開発の課題
コンポストトイレを必要とする人は、
(1)公共下水がない
(2)合併浄化槽費用が高く付く
(3)排泄物を安全な資源として利用したい
(4)野外活動の拠点で利用したい、また防災用として利用したい
などの事情がある。
下水がないところとは、都会から遠く離れた田舎、 山間、離島、山岳地帯等など、多くは寒冷地でもあり、 コンポストトイレ設置条件が揃わないところもある。
コンポストトイレを、臭気を出さす上手に使うには、 排泄物を分解してくれる好気性微生物の活動を活発に する環境因子(周辺温度・水分率・酸素供給)を整え、 最低限の維持管理を怠らないことが大切である。 その好気性微生物の適温は、周辺温度が 15°C以上で、 温度が高ければ高いほど排泄物の分解速度が早くな る。皮肉なことに、コンポストトイレの必要なところ では、その温度条件がより厳しい。好気性菌は、
(1)好冷性(6°C~20°C)
(2)中温性(21°C~45°C)
(3)高熱性 46°C~71°C、さらに超高熱性
と区分されているが、残念なことに通常 15°C以下で は多くが休眠又は死滅するとされている。
コンポストの保温や攪拌動力に風力・ソーラーパネ ルによる自然エネルギーを試みるものもあるが、設置 費用が高く天候に左右されやすい。
6、安全な堆肥の利用(大腸菌の処理)
コンポストトイレを使って、排泄物を安全な資源と して利用するには、大便の糞便性大腸菌駆除が必要で ある。そのためには、未熟成なままでは直接手で触れ ないこと(ゴム手袋の着用)、すぐ収穫する生野菜には施肥しないことが必要である。家庭で使うコンポス トトイレから取出した堆肥を、自分の田畑や花壇で利 用するとき、そこに重大な危険があるとは思えないが、 取扱には注意が必要である。
H15 年 7 月当時、岡山県で使っていたコンポスト トイレから取出した堆肥で、大腸菌駆除を試みた。
(1)取出したコンポスト(堆肥)を土嚢袋に 1 ヶ月以上保管した。(駆除期間は、周辺温度・堆肥の水 分率に左右されるが、保管期間は長ければ長いほ ど安全性が高くなる)
(2)取出したコンポストをビニール袋に入れ、炎天下 に約 15 分間放置し 55°Cを確認、さらにビニール 袋のコンポストを上下・裏表に返し、内部の温度 が 50°C~55°Cに達するのを確認した。
更に、堆肥の安全性に疑問がある場合は、石灰や草 木灰を混ぜて、殺菌する方法がある。岡山での実験結 果は、いずれも糞便性の大腸菌は検出されなかった。 (検査機関:共同組合岡山県環境整備協会 建築物飲料 水水質検査登録機関)
7、「トイレは分別式に」
コンポストトイレで排泄物を資源化するとき、尿と大便を分けて利用する方法がある。「分ける」か「分 けない」によって、よく知られるコンポストトイレ(バ イオトイレ)を例に、表 1 にまとめた。
家庭用コンポストトイレで尿と大便を分けると、その利点は、
(1)は植物の肥料としてすぐ活用できる。
(2)大便などの構成物(コンポスト)の水分率が保 たれ管理が簡単、コンポストに尿の塩分が蓄積しない。
尿は腎臓で生産される弱酸性・通常無菌、成人 1 日 平均 1.5L、90%以上が水分で植物の肥料となる養分 (窒素・りん・カリ)を含む。個人差はあるものの、 窒素は、年間3kg~5kg も活用できる。Ecological = Economical を目指すトイレは「尿分別式」コンポス トトイレであろうと思う。「分ける」必要があると考 えた。
8、 GreenLyの誕生
2004 年、開発に着手したコンポストトイレは、 2010 年に製品化した。商標は「GreenLy」とした。
8-1 「GreenLy の特長」
(1)1 尿は植物の肥料として、すぐに活用できる。 →オシッコ→肥料→作物→食物→
(2)ヒーターはつかわず省エネをめざす。電気のないところでの稼動を可能とする。
(3)攪拌は手動。大便などの構成物(コンポスト) 30L~50Lを手動攪拌するために特殊な形態 の攪拌体が必要であった。先行技術とにらめっこ で開発を進めた。 (4)周辺温度 15°C以下(5°C以上)で、大便等の分解 が進む GreenLy 独自の微生物母材を使用する。
(5)好気性微生物活動に適切な環境を整え、臭気を発生させない。
(6)最後に、大便を微生物分解して安全に活用する。
8-2 5月4日の実験
8人(大半が 30 代の男性)が、一番小さい GreenLy で 18 時間、使用実験をした。最近男性の着座でのト イレにあまり違和感がないとのこと、また尿分別式も 問題なし。年配の男性のためには小便器があったほう がよいかもしれない。
9、生ごみも発生源でリサイクル
年間、1 人分約 150kg の生ごみを、ごみ収集車が集 めて、焼却する。この労力と処理費用削減のために、 1 人でも多く、生ごみを各家庭で処理し、庭やベラン ダで土に還しリサイクルできるとよいのだが。電気を 使わない生ごみ処理器「くうたくん」は、写真のよう なプラスチックバケツで、微生物と酵素の母材が、残 飯・茶がら・コーヒー糟・尐量の廃油・なべやフライ パンの汚れなど毎日 300gを、水蒸気と炭酸ガスなど に分解する。 嵩はほとんど増えず、母材は数年間継 続して使える。畑のコンポスターは、「くうたくん」 に入らないより大きな野菜くずなどを投入し、ドラム をグルグル回す。6ヶ月~1年に1回、取出して畑の 肥料になる。このドラムコンポスターでは、畑に出没 する害獣(いたち・ハクビシン・アライグマ・いのし しなど)が生ごみを食べ散らかさないのがよい。
10、終わりに
排泄物を発生源で資源化する試みが、ますます広がる ことに期待し、水なし・電気なしで稼動できる GreenLy のようなコンポストトイレが、地震災害など 非常時のトイレとしても常設され、常から使われて、 万一の被災にも役に立つことを願っている。そのため には、一層の機能向上、改善・改良の積み重ねが必要 であろうと思う。
東日本大震災の甚大な被害を受けられた皆様にお見舞いを申し上げます。
被災地でも作れる〈緊急トイレ〉の作り方を案内します。
家屋すべてが津波に巻き込まれてしまった大震災で緊急トイレの材料が揃うか、心配ですが、被災者の方がたの長引く避難生活の一助となればと願います。
阪神淡路大震災の教訓
阪神淡路大震災のときには、水の流れなくなった水洗トイレの大量のウンチが溜まってしまい、バケツの水(少量)で流し続けた結果、「つまる」「あふれる」の問題が頻発し、避難生活がさらに苛酷なものになったと報告されています。
オシッコとウンチを分ける〈緊急トイレ〉
ウンチは、断水のトイレに少量の水で流さないで堆肥にする方法が有効です。
オシッコだけを、下水(マンホール)に流す、または復旧後の水洗トイレに流してください。
オシッコとウンチを分ける理由
・分けると悪臭がかなり軽減されます。
・分けると処理が簡単になり、被災地のゴミを大幅に減量します。
・各家庭で簡単につくって利用することができます。
用意するもの
◎座面が外せる木製椅子(木箱なで代用してもよい)
◎カップラーメンなどの容器、できるだけ大きいもの(オシッコを受けるための〈分別ボウル〉となる)
◎土のう袋、なければ古新聞。また、枯れ葉など。
◎便座(段ボール紙で代用してもよい:最下図)
◎ガムテープ または固定用ビスとドライバーなど
つくり方
①椅子の座面をはずす。座面は椅子のウラにビス止めされているのでドライバーが必要かもしれない。
②カップラーメンなどの容器に穴をあけて〈分別ボウル〉をつくる。
③〈分別ボウル〉を座面の前のほうに固定する。
④〈分別ボウル〉の下にポリタンクまたはゴミ箱を置く。ここにオシッコをためる。
⑤バケツを用意し、オシッコを受ける〈分別ボウル〉の後におく。
⑥バケツに土のう袋、古新聞または枯れ葉など、を入れてウンチを受けるようにする。
⑦家庭の水洗トイレの便座をはずしてのせる。便座は簡単にとりはずすことができます。便座シートがない場合は段ボールなどを形成してつくる(最下図)。
おしっことウンチの処理方法
オシッコは・・・
①ちかくの下水(マンホール)に流してください。
②ご自身の畑があれば、畑の土に撒いて肥料にする。
③またはポリタンクなどの容器に保管、フタをする。水洗トイレ復旧後にトイレに流す。
オシッコを長期保管する場合は・・・
分量に対して1%ほどの食酢、1%ほどの水をまえもってタンクにいれておく。
臭気の発生を長期間抑制する効果があります。ただし保管にはかならずフタをしてください。
例: おしっこ1リットル(およそ一人1日ぶん)につき、食酢10cc、水10cc
ウンチは・・・
①土のう袋のヒモをしめて雨でぬれないようにして、およそ1ヶ月保管して土に還してください。
ウンチは10リットルのバケツで15〜20回利用できます。
気温が15度以上になるとハエが発生して侵入します。トイレをつかわないときはバケツに段ボール紙などでフタをしてください。
②古新聞につつんで保管する場合は、大きいゴミ箱に密閉せず通気を保って、保管してください。できるだけ乾燥させてください。
③堆肥として最終処理するには、20センチほどの穴を掘って土に埋めてください。
④どうしても土に還せない場合は、ビニール袋に入れて燃えるゴミとして処理する。
被災地でも作れる〈緊急トイレ〉の作り方を案内します。
家屋すべてが津波に巻き込まれてしまった大震災で緊急トイレの材料が揃うか、心配ですが、被災者の方がたの長引く避難生活の一助となればと願います。
阪神淡路大震災の教訓
阪神淡路大震災のときには、水の流れなくなった水洗トイレの大量のウンチが溜まってしまい、バケツの水(少量)で流し続けた結果、「つまる」「あふれる」の問題が頻発し、避難生活がさらに苛酷なものになったと報告されています。
オシッコとウンチを分ける〈緊急トイレ〉
ウンチは、断水のトイレに少量の水で流さないで堆肥にする方法が有効です。
オシッコだけを、下水(マンホール)に流す、または復旧後の水洗トイレに流してください。
オシッコとウンチを分ける理由
・分けると悪臭がかなり軽減されます。
・分けると処理が簡単になり、被災地のゴミを大幅に減量します。
・各家庭で簡単につくって利用することができます。
用意するもの
◎座面が外せる木製椅子(木箱なで代用してもよい)
◎カップラーメンなどの容器、できるだけ大きいもの(オシッコを受けるための〈分別ボウル〉となる)
◎土のう袋、なければ古新聞。また、枯れ葉など。
◎便座(段ボール紙で代用してもよい:最下図)
◎ガムテープ または固定用ビスとドライバーなど
つくり方
①椅子の座面をはずす。座面は椅子のウラにビス止めされているのでドライバーが必要かもしれない。
②カップラーメンなどの容器に穴をあけて〈分別ボウル〉をつくる。
③〈分別ボウル〉を座面の前のほうに固定する。
④〈分別ボウル〉の下にポリタンクまたはゴミ箱を置く。ここにオシッコをためる。
⑤バケツを用意し、オシッコを受ける〈分別ボウル〉の後におく。
⑥バケツに土のう袋、古新聞または枯れ葉など、を入れてウンチを受けるようにする。
⑦家庭の水洗トイレの便座をはずしてのせる。便座は簡単にとりはずすことができます。便座シートがない場合は段ボールなどを形成してつくる(最下図)。
おしっことウンチの処理方法
オシッコは・・・
①ちかくの下水(マンホール)に流してください。
②ご自身の畑があれば、畑の土に撒いて肥料にする。
③またはポリタンクなどの容器に保管、フタをする。水洗トイレ復旧後にトイレに流す。
オシッコを長期保管する場合は・・・
分量に対して1%ほどの食酢、1%ほどの水をまえもってタンクにいれておく。
臭気の発生を長期間抑制する効果があります。ただし保管にはかならずフタをしてください。
例: おしっこ1リットル(およそ一人1日ぶん)につき、食酢10cc、水10cc
ウンチは・・・
①土のう袋のヒモをしめて雨でぬれないようにして、およそ1ヶ月保管して土に還してください。
ウンチは10リットルのバケツで15〜20回利用できます。
気温が15度以上になるとハエが発生して侵入します。トイレをつかわないときはバケツに段ボール紙などでフタをしてください。
②古新聞につつんで保管する場合は、大きいゴミ箱に密閉せず通気を保って、保管してください。できるだけ乾燥させてください。
③堆肥として最終処理するには、20センチほどの穴を掘って土に埋めてください。
④どうしても土に還せない場合は、ビニール袋に入れて燃えるゴミとして処理する。
2011年1月21日
北海道大学 大学院工学研究院・船水尚行教授の研究「低コストコンポストトイレ開発」と、有限会杜シヤウ卜プ口ダクシヨンズ(GreenLy Composting Toilet事業部)は、「低コストコンポストトイレ共同開発」に向けて情報交換に関する契約を締結しました。
同研究室のプロジェクトは、JICA事業の一環としてアフリカ・ブルキナファソ等に、コンポストトイレ(尿と大便を「混ぜない」尿分別式または、し尿分離・個液分離式)を導入されようとするものです。
2010年5月に発売を開始した「GreenLyコンポストトイレ」は、着脱式の「尿分別ボウル」で、尿と大便とを「混ぜない」システムを採用しています。GreenLyコンポストトイレの成果が途上国のトイレ事情改善と、尿などの資源循環に寄与できることを期待しています。
北海道大学 大学院工学研究院・船水尚行教授の研究「低コストコンポストトイレ開発」と、有限会杜シヤウ卜プ口ダクシヨンズ(GreenLy Composting Toilet事業部)は、「低コストコンポストトイレ共同開発」に向けて情報交換に関する契約を締結しました。
同研究室のプロジェクトは、JICA事業の一環としてアフリカ・ブルキナファソ等に、コンポストトイレ(尿と大便を「混ぜない」尿分別式または、し尿分離・個液分離式)を導入されようとするものです。
2010年5月に発売を開始した「GreenLyコンポストトイレ」は、着脱式の「尿分別ボウル」で、尿と大便とを「混ぜない」システムを採用しています。GreenLyコンポストトイレの成果が途上国のトイレ事情改善と、尿などの資源循環に寄与できることを期待しています。
Sun-Mar社のコンポストトイレ(バイオトイレ)の紹介ビデオです。
2009年10月20日~23日
滋賀県の長浜ドームで開催された「びわこ環境ビジネスメッセ2009」で、「大阪ATCエコプロダクツ」コーナーに、「GreenLyコンポストトイレ」パネル展示をしました。
滋賀県の長浜ドームで開催された「びわこ環境ビジネスメッセ2009」で、「大阪ATCエコプロダクツ」コーナーに、「GreenLyコンポストトイレ」パネル展示をしました。
パネル:世界のコンポストトイレ
①尿分別式:GreenLyほか2製品
②尿非分別:アメリカ・カナダ製品
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GreenLyの「尿分別式」を、日本では「尿分離型」、「個液分離型」を呼ばれている。 英語圏では、「divert」又は「separate」が使われる。
「尿と大便、コンポスト化の過程」
家庭用コンポストトイレ(社名又は製品名)
①尿分別式:GreenLyほか2製品
②尿非分別:アメリカ・カナダ製品
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GreenLyの「尿分別式」を、日本では「尿分離型」、「個液分離型」を呼ばれている。 英語圏では、「divert」又は「separate」が使われる。
「尿と大便、コンポスト化の過程」
家庭用コンポストトイレ(社名又は製品名)